日記
再会が彩る人生の美しさ
その夜、店の扉を開けて入ってきたのは、数十年という歳月を軽やかに飛び越えてきた風でした。
「いらっしゃいませ」と声をかけた私の視線は、一瞬だけ泳ぎます。正直に言えば、最初にお顔を拝見したとき、記憶のパズルはすぐには組み上がりませんでした。けれど、彼女たちが席に着き、言葉を交わし始めた瞬間、店内の空気は魔法がかかったように色づき始めたのです。
高校時代の同級生。かつて同じ学び舎で、同じチャイムを聞いていた少女たち。
記憶の糸、言葉の魔法
お互いの顔かたちは、時の流れという優しい筆によって書き換えられています。けれど、ひとたび口を開けば、そこにあるのは共通の温度を持った「あの頃」の話。不思議なものです。名前を思い出すより先に、心が当時のリズムを思い出していく。
彼女たちは、卒業から今日までずっと交流を続けてこられたといいます。それは決して当たり前のことではありません。 それぞれの人生には、語り尽くせないほどの「いろいろなこと」があったはずです。 晴れの日ばかりではなかったでしょう。風の強い日も、立ち止まって動けなくなった夜も、きっとあったに違いありません。
刻まれた美しさ
しかし、目の前で笑い合う彼女たちは、そんな歳月のすべてを「いま」を輝かせるためのスパイスに変えてしまったかのように、生き生きとしていました。 その美しさは、単に若さを保っているということではなく、人生の荒波さえも優しく受け流してきたしなやかさから来るものです。社交性の高さや、周囲を明るくする気遣い。それらは、彼女たちがこれまで誠実に、そして懸命に日々を積み重ねてきた証左でもありました。
笑顔という名の「ごちそう」
宴もたけなわ、彼女たちは満面の笑みでこう言ってくださいました。
「ああ、おなかいっぱい!ごちそうさま!」
その声の弾み、表情の輝き。 提供した料理以上に、彼女たちが持ち寄った思い出と、再会を喜ぶ純粋な心が、その場を最高のご馳走に仕立て上げていたのだと感じます。
人生のさまざまな出来事を、すべてこの瞬間の笑顔に昇華させてしまう。そんな美しい生き方を見せてもらったような、清々しい夜でした。 去りゆく背中を見送りながら、私は思いました。 「また明日から、私もいい時間を積み重ねていこう」と。
